オペラ「パルジファル」みどころ
今回はワーグナー作曲、舞台神聖祝典劇「パルジファル」のみどころを歌手目線でご紹介していきます。
このオペラはドイツ・バイロイト祝祭歌劇場でのみで演奏されることを許可されていた作品で、近年解放されたことで世界中で演奏されることになりました。
オペラを観る前にみどころを押さえていきましょう
●前奏を聴いていきましょう ~ライトモチーフ~
ドイツの大作曲家ワーグナーは、イタリアの大作曲家ヴェルディと同時代を生きたオペラ作曲家です。ワーグナーの功績はいろいろありますが、そのうちの一つがライトモチーフ(示導動機)です。
ライトモチーフとは、キャラクターのテーマソングのことで、例えば映画「スターウォーズ」でベイダー卿が現れるとダースベイダーマーチが流れるといったところです。この手法を初めて取り入れたのがワーグナーというわけ。
「パルジファル」ではライトモチーフが前奏に集約しています。つまり、前奏を聴いてから観に行くと、テーマソングを押さえたといえるわけです!前奏は全4時間半のオペラを15分に凝縮しているので、ぜひ聴いてから観に行きましょう。
例えば劇中で、花の乙女のことを歌っていると、オーケストラは花の乙女のテーマを演奏しているという感じで、何度も繰り返されるテーマでより物語の進行をわかりやすく助けています。
「パルジファル」を観ながら、ここは○○○のテーマが流れていると気づけたら、あなたはもうオペラ通ですよ!
●このオペラのテーマとは ~Durch Mitleid wissend~
このオペラのテーマは、Durch Mitleid wissend, der reine Tor, harre sein', den ich erkor.(哀れみから知るでしょう、清らかな愚か者を、待つのです、私が選んだその者を)です。
この劇中の歌詞は、言い伝えとして何度も劇中で歌われます。
聖杯と聖槍の真の力を発揮するためには、清らからな愚か者(純真無垢な者)が必要だということを言い伝えています。聖杯は生命を延命させ、奇跡の回復を起こすといわれていますが、その真の力を呼び起こせるのが清らかな愚か者なのです。
オペラ「パルジファル」は、清らかな愚か者が苦しみから解放することを大きなテーマとしています。
この歌詞が劇中で何度も歌われます。この最後のフレーズの和音で苦しみから救われた気持ちになる。特に一幕でこの歌詞を小姓が4人で重唱する場面の美しいハーモニーがみどころです。音楽が歌詞の持つパワーを最大限に引き出していると感じるフレーズをお見逃しなく!
●それで「パルジファル」はどんなストーリー?
まずこの作品のタイトル「パルジファル」とはストーリーの主人公(主役)の名前です。ヘルデンテノール(男声)が歌います。
このようにオペラのタイトルが役の名前になっている役のことをタイトルロールといいます。
このオペラのキーワードは「聖杯をめぐる争い」です。
聖杯を守る聖杯の騎士団、そして、聖杯を奪おうとする魔法使いクリングゾルの争いです。
物語は魔法ファンタジーなので何でもありです。
1幕
聖杯は聖杯城(モンサルヴァ―ト城)で聖杯の騎士団によって守られています。モンサルヴァ―ト城の城主アムフォルタスは、聖槍で腹部を刺されて以来、傷が癒えることなく常に苦しんでおり、アムフォルタスの父であるティトゥレルから役目を引き継ぐ儀式が執り行えない状況が続いています。
モンサルヴァートの森(聖杯の領域)、老騎士グルネマンツと聖杯の騎士が呪われた妖女クンドリをみつけ、クンドリはアムフォルタスの傷に効くという薬を持ってやってきたといいます。クンドリは死ぬことができない呪いをかけられており、長い間生き続けています。
パルジファルは記憶をなくし、時空を超えて聖杯の騎士団の森へ迷い込んでしまします。
そこで白鳥を弓矢で撃ち落としてしまったところを、聖杯の騎士にみつけられ咎められますが、「白鳥を仕留めることがなぜ悪いかわからない、良いこととはどんなことなのか」と善悪の判断がつかないと主張するパルジファルを、待ち望んでいた「清らかな愚か者」なのかと期待が高まります。しかし、パルジファル自身が記憶を失っているために力が発動されません。
2幕
クリングゾルの魔の城にて、魔性の美女達(花の乙女)の誘惑にまけて聖杯騎士団が次々と落ちていき、ついには守ってきた聖槍をクリングゾルに奪われてしまいます。
クリングゾルは聖杯の騎士団に入団させてもらえなかったことをずっと恨んで、様々な妖術をみにつけていました。そこで、聖槍を手に入れたいま、聖杯を手にすべく画策しています。
クリングゾルは、クンドリを怪しげな妖術にかけ、パルジファルを誘惑させようとするのですが、パルジファルはクンドリの接吻によって知恵を授かり、記憶を呼び戻すのです。
そして、誘惑に屈しないパルジファルにむかって、クリングゾルが聖槍を投げつけると、パルジファルはその聖槍を手にし、クリングゾルの魔法をとき、城を廃墟にするのです。
3幕
長い時間をかけ聖杯城近くの草原にたどり着いたパルジファルはグルネマンツと再会する。グルネマンツは「これぞ聖金曜日の奇蹟」と喜びます。
アムフォルタスは痛みに耐えられず苦しんでいたところに、パルジファルが聖槍でアムフォルタスの傷口をふさぎ苦しみから解放される。
聖杯の騎士団はパルジファルは新しい聖杯王とし、最初の役目として聖杯の開帳を行う。クンドリの呪いが解け息を引き取る。
音楽がとても美しいので、最後まで聴いて救われる気持ちになるのを劇場で体感してほしいです♪
東京二期会オペラ劇場70周年記念公演
「パルジファル」
2022年7月16日(水)17:00~、16日(土)14:00~
に、チムズミュージック講師のテノール・西岡慎介が第一の聖杯の騎士で出演予定。
東京二期会オペラ劇場
http://www.nikikai.net/lineup/parsifal2022/index.html
●前奏を聴いていきましょう ~ライトモチーフ~
●このオペラのテーマとは ~Durch Mitleid wissend~
●それで「パルジファル」はどんなストーリー?
●パルジファルとは